
- Jucyレンタカーの受付
- Jucyレンタカーで「self contained」を選んで、予約するまで
- いよいよ、運転席に座った
- キャンピングカーでのニュージーランド周遊計画はchatGPTで作った
- 最初の目的地 Hot water beach をナビに入力し、発車した
- 重大インシデント発生。ガスボンベの扉が走行中に開いた。
- キャンピングカー生活では養生テープが大活躍した
- 腹が減ったので、Tairua町のスーパーで食料を初めて買った
- Hot water beachに着いた
- Whitiangaに着き、無料駐車場が満車で他を探した
- 目指した無料駐車場が満車だった。急遽、他を探すはめになった。
- キッチンのカバーの開けても勝手に閉じてくる不具合を養生テープで対処した
Jucyレンタカーの受付
私はJucyレンタカーの正門を通り、受付に行った。私の予想を覆し、誰もいなかった。広大な敷地に対して、働いている人は少なかった。数分後に、スタッフが通りがかったので、私は彼を呼び止めて言った。「私はシノダで、今日から借りることになっている者です。」
スタッフは、リストを見て、すぐ理解した。私は運転免許証と国際運転免許証を提示し、残額をクレジットカードで決済した。

彼は言った。「車を準備するので、しばらく、ここで無料のコーヒーを飲んでいてください。」
入り口の近くにコーヒーコーナーがあり、大きな木の机が置いてあり、お客はここでくつろげるようになっていた。はやくも、キャンピング気分に浸れる仕組みが素晴らしい。
Jucyレンタカーで「self contained」を選んで、予約するまで
ここで、私がJucyレンタカーの予約を日本でした経緯について述べておこう。
私がニュージーランドをキャンピングカーで旅行しようと決心したのは、2024年9月の上旬だった。
ウェブで比較したら最安値がJucyレンタカー
キャンピングカーを貸す会社はニュージーランドに複数あった。しかし、とびぬけて安いのがJucyレンタカーだった。裕福でない私はJucyレンタカーしか選べなかった。

次に、どの種類のキャンピングカーを選ぶかが問題となった。Jucyレンタカーのウェブで車の説明を読んでいるうちに、「self contained」という言葉が目に入った。どうも、この言葉がかなり重要らしい、ということが私は読んで分かった。同じワンボックスタイプの車でも、「self containedの車」と「そうでない車」があり、前者の方がレンタル料が高い。
私はその言葉を検索し、それが「トイレが付いていること」という意味だということを理解した。正確には、シャワー、キッチン、トイレから出る汚水のタンクを備えている事である。
ニュージーランドでのキャンピングカー生活をユーチューブでいくつか見たが、どのユーチューバーも裕福で、self containedのキャンピングカーを借りているが、実際には、有料キャンプ場の施設でシャワーとトイレと料理を済ませていた。そして、そのユーチューバー達は、「有料キャンプ場で何でも済むから、車のシャワーとキッチンは必要ありませんでした。」と言っていた。
しかし、私の状況は裕福な彼らと全く違う。私は節約するために最も安いJucyレンタカーを選んだのだから、当然、その流れで、無料のキャンピング場を選んで最安値でニュージーランドの自然を堪能したいのだ。つまり、富裕層のお気楽キャンピングカー旅行記なんて役に立たないのだ。
ニュージーランドにはたくさんの無料キャンピングカー駐車場がある。しかし、この中で車内泊を認めている駐車場は必ず「self contained(自己完結型)」を宿泊条件に掲げている。
このことを格安を謳うJucyレンタカーはもっとアピールすべきだと思う。ただ単に車のスペック欄に「self contained」とポツリと表記するだけでは、外国人キャンパーにとって、借りた後の運命があまりに違い過ぎることになるからだ。
唯一、「self contained」のchaser型を選択した
Jucyレンタカーのウェブを見ると、最安値のキャンピングカーでself containedなのは、トヨタのハイエースを改造したチェイサー型だった。



追加の保険は最高値の55ドルコースを選択した
車の選択を終えると、次は保険の選択である。ここを読んでいて、新たな心配が生じた。
それは、GPSである。私は方向音痴で、過去にナビが無くてかなりの遠回りをしたことが何度もあった。スマートフォンのグーグルマップのナビ機能は果たして大自然の中でも圏外にならずに機能してくれるのだろうか。人のいない山奥で道に迷うことは致命的でもあるし、日程に余裕が無い今回の旅行では一日の遅延が後の行程に大きく影響を与えることになる。
ここは保険をかけて、私はスマホのナビと車専用のナビという二重の安全策を取ることにした。そうなると、一番高い「ストレスフリープラス」になる。節約旅行だが、安全安心を節約する気にはなれない私だった。
結果論で言うと、無保険でもよかったし、「ストレスフリー」でもよかった。何の事故もなかったし、車専用のナビはスマホのナビと同等に「地図表示できない」場所があったからだ。
意外に役に立ったのは、テーブルで、これは屋外用のもので、「リア充」の写真を撮る時に役に立った。

「事前に購入したガスボトルがある」を質問したが、返事がすごく遅かった
決済確認画面まできて、私はこれまで説明されていない文字を発見した。「pre-purchased gas bottle」である。「事前に買ったガスボンベ」という意味だが、キャンピングカーを借りるのに、ガスポンべが付いてくるのは当たり前だと私は思った。そんな当たり前のサービスが最高値の保険で初めて付いてくるなんて、Jucyレンタカーは暴利をむさぼっているのか、と不審に思った。格安キャンピングカーサービスは実はいたるところで当然のサービスが欠落していて、有料の追加サービスとして、結局は高くなるようにしているのではないか、と私は疑い始めた。
私はJucyレンタカーのウェブのヘルプコーナーを見に行ったが、そこはどこにでもある役に立たないAIチャットコーナーだった。何の言葉を英語で入れても、「お役に立てず、申し訳ございません。」しか出てこなかった。FAQも貧弱で、書いてなかった。しかたないので、グーグルとchatgptでメールアドレスを探し出し、そこへpre-purchased gas bottleについてメールした。他にも、知りたいことがあったので別のメールで質問した。
メールの返事が返ってきたのは、とても遅く、4日後と1週間後だった。私はJucyレンタカーの顧客対応力に疑いを持ち始めていた。
ガスボンベの件は、「車の返却時に、通常はガスボンベを満タンにして返す必要があります。それが、当社が予め買っておいたガスボンベがありますので、その必要がなくなる、というサービスです。」ということだった。
この情報は、かなり重要な情報ではないだろうか。なぜなら、ニュージーランド滞在中、日程いっぱいに旅行している者は、最後まで運転を堪能しているだろうから、最後に、そんな仕事が残っていると、旅行を早めに終わりにしなければならなくなるからだ。車の返却では、ガソリンを満タンにする、汚水タンクを空にするというタスクがある。それにガスボンベを満タンにするが加わったら、慣れない土地でかなりの時間がかかり、ストレスになるのではないだろうか、と思った。それがせずに済むというのなら、だいぶ負荷が減るだろう、と思った。これについても、さらっと一単語が書いてあるだけの現状に、私は不満を抱いた。
しかし、そうはいっても、貧乏な私には、Jucyレンタカー以外に借りることができる場所は無く、私は疑念を募らせたまま借りることにした。

10%offのクーポンが翌日には画面から消えていた
いろいろな疑問がほぼ解消された私は、Jucyレンタカーのサイトに戻って決済することにした。すると、なんと、ホームページにあった10%offのクーポンが消えていた。たしか、そのクーポンには、申込期間が9月30日までとあったので、まだ9月初旬なのにクーポンが消えてしまうとは、どういうことだと思った。先着50人までという記載もあったような気がするが、季節外れのこの時期にそんな簡単に50人に達したとは思えなかった。ここら辺の適当ぶりもJucyレンタカーの企業体質なのだろう。
いったん、ウェブサイトを離れて、また戻ってくると、今度は「20%off」というクーポンが掲載されていた。前のは10%offだったので、よりよい条件のクーポンが登場したと私は喜んだ。しかし、これはすぐに失望に変わった。詳細ページに進むと、「9月中に借りて、返却することが条件」と書いてあったのだ。私のニュージーランド滞在は10月2日までである。つまり、10月1日と2日のキャンピングカー生活を放棄するなら、この20%off、金額にして4万円が節約できることになった。
この4万円は大きい節約だが、よく考えると、譲歩できない案件だった。
なぜなら、ニュージーランド旅行を次にするのは何十年後かになるかもしれないこと、キャンピングカー生活は私の夢であること、日本でキャンピングカー生活をするのは金銭面、時間面からも当分できないこと、以上を考慮すると、私は今回の旅行で時間の許す限りキャンピングカー生活を楽しまなければならないことになるのだった。
結果論から言うと、この判断は正しかった。実際にやってみると、ニュージーランドは意外に広くて、13日間では不足だった。これが11日間になっていたら、南島はクィーンズタウンまで行けなかっただろう。
となると、10%offのクーポンを利用したくなるが、今は、掲載されていない。9月末まで申し込み可能なのに。
そこで、私は過去の画面を見る事が出来るサイト「Wayback Machine」を見に行くことにした。私は過去にホームページ制作会社を経営していたので、その辺の情報には詳しいのだ。ホームページの管理者がホームページを更新しても、昔のバージョンが別の場所に保管されているというのは怖い話だが、実際にはそういったサービスは複数ある。
そこで、Jucyレンタカーの9月初旬のホームページを見ると、10%offのクーポンが掲載されていた。
やはり、それには9月末まで申し込み有効と記載があった。問題はそのクーポンコードがシステム的に有効かどうかだが、そこはだめで元々でやってみた。結果は有効となり10%offで決済された。
ウェブでは手付金決済を選択した
その決済だが、二種類ある。全額決済か手付金決済かである。私は旅が何かの都合で無しになるかもしれないこと、Jucyレンタカーに対して疑念があること等を考え、手付金だけの決済にした。
その後、日本で出発日が近づいてくると、やたら、「はやく全額決済したらどうですか。その方が現地に来たらすぐに乗り出すことができますよ。」というメールがJucyレンタカーから来た。しかし、私はそれを無視した。まさか、無視することで、キャンセル扱いになる事はないだろうな、と疑いながらである。

海外旅行保険でソニー保険を選択
ここで、海外旅行保険について記しておこう。今回は不慣れな外国での二週間の運転である。運転して疲労がたまって事故を起こすことは十分に考えられることだった。
そこで、海外旅行保険に入ることを考えた。比較し、ソニー損害保険の海外旅行保険に入った。
しかし、後で分かったことだが、レンタカーに起因する損害は保険の対象外だったのだ。これはどの海外旅行保険でも同じらしい。運転以外でもリスクはあるのだから無駄ではなかったと思うが、私の目的が達成できない保険に加入していたことは恥ずべきことだった。
それにしても、そのことを商品紹介のページでうたっていなく、契約条項で「車、船舶に起因する損害は対象外」とさらっと書いてあるだけの保険会社の姿勢に、わたしは憤慨した。まったく、売り込むときだけは一所懸命で、一番損害が発生しやすい場合については保険の範囲外である、と契約書に埋もれるようにして記載する保険業界の体質は、いつまでたっても変わらないな、と思った。

ついに、相棒となるキャンピングカーと対面
話を戻そう。Jucyレンタカーの受付ロビーで私がコーヒーを飲みながら待っていると、スタッフが戻ってきて、言った。「用意ができた。」
そこで、彼の後に付いていくと、広い屋内整備場に出た。そこに、私の相棒となる車が待っていた。

自動車整備士を兼ねているスタッフは車の仕組みについて説明した。ほとんどのことを私は既にウェブの説明でしっていたので、うなづきながら聞いていることができた。
嬉しかったのは、彼がこう言ったことだった。「シャワールームは新品の物です。」しかし、この言葉を全否定するような事件がすぐ起こった。
彼が一息ついたところで、私はキッチンの排水パイプから漏水がないことを念を押すつもりで訊いた。実は、ユーチューブで、別々に借りた二人がJucyレンタカーのチェイサー型においてキッチンのシンク下のパイプから漏水があって床が水浸しになってしまったことが紹介されていたのだ。私は日本にいる時にメールでこのような事態が起こらないようにJucyレンタカーに頼んでおいたのだ。彼は言った。「大丈夫だ。下のパイプからの漏水は無いことをチェックした。」
そして、彼は再び説明を開始したが、その中で私のキャンピングカー生活を根底から覆す失望させる車の仕様を言った。
シャワーとキッチンの温水が自力では出ない事に騙された思いをした
1つ目は、シャワーとキッチンのお湯は、外部電源と接続されている時だけ使える、という事実だった。外部電源と接続することは、つまり、事実上、有料キャンプ場に泊まらないと使えないことを意味する。無料キャンプ場には外部電源は無いからだ。それじゃ、「自己完結型(self contained)」にならないじゃないか、と思った。確かに、法律では、self containedはトイレの汚水タンクを備えていることを必須条件にしているが、それは汚水処理の方法を法律化しただけでの話であって、self containedの意味からすれば、生活がその車だけで完結することを意味する。外部電源と接続した時だけ温水が出るのでは、節約旅行の為にJucyレンタカーで車を借りたのに、キャンピングカー旅行中、私はシャワーを浴びれないことになる。なんということだろうか。こんな大事なことは、ウェブに太字で記載すべきことではないだろうか。
USB充電のコンセントの位置が中央の屋根の部分にある事に不便さを感じた
2つ目は、USBによる充電の口の位置である。Youtubeの紹介動画では、助手席の背後にそれがあったが、今回は運転席から遠く離れた中央の天井部分に設置されてあった。これがどう不便なのかを説明しよう。運転が始まると、私はグーグルマップのナビゲーションに従って運転することになる。この時、スマホをフロントガラスに器具を使って付けることになる。長時間にわたって運転するので、ナビ機能で電気を食うスマホは充電しながら使うことになる。つまり、USB充電の口からフロントガラスまで届くケーブルが必要になるのである。その長さは4メートル。激安店がどこにあるか知らない、知ってもそこまで買いに行く余裕が無い外国人観光客は、近くの電気店で正規の価格で買うか、買うのをあきらめて、いつスマホのバッテリーが切れてナビ無しで運転しないといけなくなるのかを心配しながら運転する、どちらかの状況に陥ってしまう。
まったく、不親切な設計ではないだろうか。繰り返しになるが、車載GPSは有料オプションであり、標準装備ではない。これは、スマホでのグーグルマップのナビが台頭し、車載GPSが衰退したからだ。それなら、スマホがナビとして使われることを考慮した設計思想を持たなければならないし、もし、仕方なく不便な状況を生み出したなら、それを補うようなサービスを標準装備でつけるべきである。この場合は、4メートルのUSBケーブルである。
幸い、日本でキャンピングカー動画を見て学習していた私は、あるユーチューバーが別のキャンピングカー会社の動画で、「充電用に長いUSBケーブルがナビを動かしている時に必要だ。」と言っていたので、一応持って行くか、と思って家にあった一番長い3メートルのものを持参してきていた。少し長さが足りないが、運転席の脇のジューススタンドまではとどくので、最適ではなかったが最悪でもなかった。
こういったJucyレンタカーの不意打ち、不便さ、質問のしづらさ、回答の遅さに私はだんだん慣れてきたものの、不満と疑念がうずまくのであった。



いよいよ、運転席に座った
自動車整備士が去った後、広大な屋内整備場に一人残された私はいつでも発車していい状態だった。そうは言っても、私はニュージーランドに着いてからずっと緊張していたことと、最後に運転してから4年は経っていることから、すぐにエンジンをかけて運転する気にはなれなかった。それに、私はナビに入力すべき具体的な目的地をまだ決めていなかった。
キャンピングカーでのニュージーランド周遊計画はchatGPTで作った
ここで私がどうやってニュージーランドでキャンピングカーを使って周る計画を作ったのかを説明しよう。
日本にいる時に、chatGPTで作ったのだ。質問は「ニュージーランドでキャンピングカーを使って無料の駐車場に宿泊しながら、北島と南島を周るコースを考えてくれ。9月21日11時にオークランドからスタートして、10月2日14時にオークランドにもどるのが条件です。それぞれの日の運転時間と宿泊場所の名前も示してくれ。」
chatGPTの示した計画は私が一人で考えるものより良かったと思う。しかし、何度やっても、復路の計画に無理があった。北島の下端のウェリントンから北島の上端のオークランドまで一日で帰る、という日程があった。長距離トラック運転手なら昼夜連続で走ることができるだろうが、私には到底無理だと思われた。しかし、おおまかなアウトラインを決めるのにchatGPTは大いに役に立った。
結果論から言うと、最初の三日間はchatGPTの計画に従って運転したが、徐々にニュージーランドに慣れてきた私は、それを見ずに、キャンピングカー生活支援のcampermateとガソリンステーション検索のgaspyで目的地を決めて運転した。
最初の目的地 Hot water beach をナビに入力し、発車した
話を戻そう。運転席で私はchatGPTが作った計画を印刷した紙を眺めた。まずは、ホットウォータービーチ(hot water beach)に行くことになっていた。オークランドから165kmだ。私は車載GPSとスマホのグーグルマップのナビそれぞれに入力して案内を始めさせた。
この時点で、私は自分の予想以上にニュージーランドが広大なことに気が付いた。165kmの距離は私にとってかなりの長距離だ。東京駅から静岡駅ぐらいまである。しかし、地図でニュージーランドを見ると、ほとんど走っていないことになる。つまり、二週間だと一日当たりかなりの距離を走らないとニュージーランド全部を見て周れないことになる。それは運転する時間が長く、目的地で散策する時間があまりないことを意味する。仮に散策、ハイキングできたとしても、疲労がたまることは交通事故のリスクが高まるので、毎回セーブしてそれらをしないといけないことになる。

四年ぶりの運転、しかも、海外で、しかも大きなキャンピングカーで、私はエンジンをかけたものの、オートマチックのギアをDに入れるという超簡単で、これをしないと旅は始まらないという行為をすることにしばし恐怖を覚えた。
敷地から出た瞬間に衝突事故を起こしたらどうしよう、と思ったりもした。
しかし、当たり前だが、ここで「もう、十分です。夢はかないました。」と言う訳にはいかなかった。
非情にも、Jucyレンタカーの人は誰もいなく、こんな人生の記念すべき旅立ちの瞬間に見送る人がいなく、独りぼっちで出発することに私は寂しさを感じた。もちろん、Jucyレンタカーの人をこれで恨んだりはしていない。
エンジンをかけ、そろりそろりと屋内整備場を出た。正門まで来ると、右ウィンカーを出し、左右を確認してアクセルを踏んだ。一つ一つの運転行為が4年ぶりなので、何か忘れていないか、と思い出しながら車を進めた。車が境界となる縁石を乗り越え、ガコンと音を鳴らして公道に出た時、「うわー、始まっちゃっよ。」と私は肩をすくめた。まだ、30mも走っていない。

重大インシデント発生。ガスボンベの扉が走行中に開いた。
一般道を走りだして間もなく、私の左横に乗用車が並走し、何かを叫んでいた。私は窓を開けた。彼は叫んだ。「お前の車のガスボンベの扉が開いているぞ。」
私はバックミラーを見た。なんと左側の後部にあるガスボンベの扉が開いたり、閉じたりしているではないか。つまり、鍵がかかっていない状態なのだ。確か、出発前に整備士が説明し、鍵をかけたようだったが、私の記憶違いだろうか。私は自分で確かめないで出発したことを後悔した。
しかし、真実は違っていた。鍵自体が整備不良だったのだ。
彼が声をかけてくれたのは私にとってありがたかったが、タイミングが遅すぎた。私の車が一般道から高速道路に入る直前に言われたのだ。
ニュージーランドの高速道路は基本的に無料で、日本のように料金所が境界に無い。つまり、一時停止の機会が無いまま、高速道路に入る事になる。
私は猛烈に焦りながら運転する事態となった。バックミラーからガスボンベの扉の状態を観察すると、車が減速するときだけ、物理学の慣性の法則によって開くことが分かった。走っている時は、前からの風によって扉は閉じているが、減速し始めるとまるで飛行機の翼のフラップのように開くのであった。
私は日本の高速道路にあるようなサービスエリアが現れるのを期待しながら、運転したが無情にもニュージーランドの高速道路にはサービスエリアはめったにないのが現実だった。理由は簡単で、高速道路は無料だから、もし休憩したくなったら、気軽に高速道路を降りて、一般道路のカフェとかガソリンスタンドを探せばいい、というニュージーランド道路局の理屈が成り立つからだ。
しかし、土地に不慣れな外国人にとって、高速道路を途中で降りるということは難易度が高い行為だ。降りるのは簡単だが、問題はどうやって再び入るかだ。それを考えるだけで、気が重くなってくると言うものだ。
私は、できるだけ減速しない運転、つまり、一定の速度で走って、風によってガスボンベの扉を閉め続ける方法を取った。一定の速度で走るというのは、簡単そうに聞こえるが、案外難しい。合流車線で車が割り込んできたら減速しないといけないし、上り坂では車が非力なので勝手に減速する。
もはや、ニュージーランドの雄大な景色を楽しむどころではなかった。左バックミラーと前を見るだけの運転となってしまった。乗り出し初日でこんな目に会うことで、私のニュージーランド旅行に対する評価は、シャワーを浴びれない事も含めてマイナス80点になった。
バックミラーを見続ける運転でだいぶ疲弊した頃、やっと、サービスエリアがでてきた。私は遭難者が山小屋を見つけた気分で、左ウィンカーを出し、入って行った。
駐車場に停めると、私は「はぁー。」と大きくため息をついて、ハンドルにうつ伏せになった。
数分後、私は気を取り直して、ガスボンベの扉を見に行った。
事実はこうだった。鍵はかかるのだが、扉の内側で鍵全体が固定されていなかったのだ。だから、鍵全体が車の振動で回転してしまい、扉が開いてしまったのだ。これは自動車整備の問題であり、私には非難される点が無い。もっとも、停車中は鍵をかけると、開かないので、この問題を整備士が発見するのは難しいと思われる。しかし、それでもこれは自動車整備の問題で、運転前に発見されなければならない問題だ。
私は、日本から持ってきた養生テープを使って開かないようにした。
ここで読者は思うだろう。「なぜ、彼は養生テープなんか持参したのだろうか。」

キャンピングカー生活では養生テープが大活躍した
私が日本にいた時、キャンピングカー生活のために持っていったら便利だろうと思ったものは、養生テープ、紙皿、長いUSBケーブルだった。このどれもが実際に役に立った。
どれもがニュージーランドで買う事ができる物だ。しかし、円安の今、外国で買うと、かなり高くなることを私は想定した。紙皿はかなりの枚数で1パックになるだろうから、その多くが無駄になるだろうと思った。養生テープは、日本での私のDIY生活において、その場しのぎの処置として役に立っていたこと、それにニュージーランドのスーパーでは扱っていないだろうと思われたことで持って行くことにしたのである。
話を戻そう。養生テープで扉が開かないようにした後、私は初めてニュージーランドの風景を安心して眺めた。といっても、サービスエリアから見える風景なので、雄大な自然という訳ではなかった。それでも、やっと広い空をゆっくり眺める事が出来たのである。
腹が減ったので、Tairua町のスーパーで食料を初めて買った
緊張の連続の運転で腹が減ったので、スーパーに寄って食料を買うことにした。140km走っていた。しかし、まだ、私はニュージーランドの食べ物、価格の相場、支払い方法に不慣れなので自分の知っている食べ物だけを必要最小限で買うことにした。
実は、私には苦い経験がある。昔、シンガポールで、着いた初日にコンビニで買ったパンがボソボソで不味くて食べられなかったこと、翌日に屋台で食べた麺もただのお湯に麺が入っていただけで、不味くて残したこと、これらの経験から初めての土地では少しだけ買って食べて、美味しければ、次回たくさん買うことが正解だと悟った。
その後、シンガポール生活に慣れた私は美味しい食べ物にもたくさん出会ったことを付け加えておこう。



買った物は、牛乳とコーンフレークと鹿のソーセージだ。鹿肉を日本で食べることは普段の生活で入手困難なので、買ってみることにした。値段はどれも日本の2倍だと思っていただければいい。
スーパーでの支払いはタッチ式のクレジットカードで済んだ。日本で作ったPaypayのvisaカードが通用した。

早速、私は牛乳を飲んでみた。たしかに、新鮮でコクがあっておいしかった。さすが酪農国のニュージーランド、普通レベルの牛乳でさえハイレベルだった。
ニュージーランドに来て以来、まだ観光スポットに到達していない私だったが、牛乳を飲んで、やっと一息つけた感じがした。牛乳のお陰で安心感が湧いてきた。
Hot water beachに着いた
タイルア町からホットウォータービーチまで23km、30分で着いた。
私にとって、ホットウォータービーチはニュージーランドで初めての観光名所だった。車が無いと来れないこと、季節外れだったことで観光客はまばらだった。それでも砂浜から湧き出てくる温泉に触れた時、私は、ああ、ニュージーランドは火山国なんだな、と実感し、自然を体感できたことに感動した。





ここでの公衆トイレも外観が自然に調和するデザインでお洒落だった。中もとても清潔で、毎日誰かが掃除に来るのだろう。水洗式ではないが、それでもとてもきれいで、嫌な思いをしないで済む状態だった。注意すべきことは、室内灯が無いので、夜はライトを持参して行かないといけないことだ。


Whitiangaに着き、無料駐車場が満車で他を探した
ホットウォータービーチから33km運転して、フィティアンガ(Whitianga)町へやってきた。着いた時は日没後で、私は初日の緊張した運転で200kmも走っていたので、かなり疲れていた。

目指した無料駐車場が満車だった。急遽、他を探すはめになった。
私は国道25号線を走って、やっと町に入ったときは、「はあ、やっと今日の寝る場所に着いた。今日はもう走らなくていいんだ。」と安心した。
キャンパーメイトというニュージーランドでのキャンピングカー生活を支援するアプリをスマホで開き、泊まる場所を確認し、それをグーグルマップに転送し、グーグルマップにナビをさせた。


私は町の喧騒から離れているように見えるTcdc駐車場へ向かった。大通りから離れていて騒音に悩まされずに眠れると思ったからだ。それに水辺に近いので、朝起きた時、気持ちのいい散歩ができるのではないか、と思ったからだった。

グーグルマップのナビが「お疲れさまでした。終点です。」と言った時、私は今日の使命が終わった感じがして、安堵感でため息をついた。
しかしである、車を降りて見上げると、キャンピングカー用の駐車スペースはあちら、という看板があるではないか。つまり、この駐車場の全てがキャンピングカー用ではなく、キャンピングカーはもっと奥の隅にある、ということだった。さらに目を見開かされる文言が記されていた。
4台まで。
この台数制限はニュージーランドにおけるキャンピングカー生活で超重要な情報の一つである。実際は、駐車場全体で空きスペースが沢山ある。しかし、キャンピングカーでの車内泊は黄色い線で囲った部分だけで、そこ以外に停めると、役人に見つかった場合は罰金を払うことになる。では、警察は見回りに来るのか、というと市街地内だと来る可能性が高い。大自然の中だと、そもそも駐車スペースを示す線が引いてないので、台数制限が無い。
私は一般車用のスペースに停めていたのだ。私は慌てて車に戻り、再度エンジンをかけ、そろりと奥へ向かった。先程の安堵感は吹き飛び、一抹の不安を抱えながら進んだ。
こういう時の悪い予感は当たるものだ。キャンピングカー用スペースは満車だった。そして、私の車のヘッドライトで照らされた先客たちは車の窓のシェードを降ろし、車内で楽しく過ごしている彼らの様子が影絵のように写っていた。
私は、寒空の下で裕福な人たちの屋内パーティを覗いているマッチ売りの少女と自分を重ね合わせた。
記念すべき初夜から違法駐車で警察に捕まることは避けたかったので、別の無料駐車場をキャンパーメイトで表示させ、再びナビをさせた。なかなか終わらない一日だった。
次なる候補地は街中の大きな駐車場で、風情は無いように思えた。しかし、ここしかない事実とここも満車だったら、私は30km離れた駐車場に行かねばならない。しかも、そこが空いている保証はない。最悪、夜通し泊まるところを探して放浪せねばならないことに私は焦った。一体、いつになったら私はニュージーランドの大自然に癒されて深呼吸できるのか、と思った。

結果は、4台のスペースのうち、先客は1台だけだった。私はその隣に停めた。4台分あるのだから、一台分の間をあけて停めてもいいのだが、詰めて停めた方が後から来る車が停めやすいだろう、と思いやりからそうしたのだった。

しかし、害は無かったが、隣人は変人だった。
私が車を停めて、外に出たとたん、隣人が車の横のドアをガラガラーと開き降りてきた。彼は嬉しそうな声で言った。「やあ、こんにちは。よく来たね。」
彼の外見は、1960年代のアメリカのヒッピーのようだった。彼の外見は長髪によれよれのTシャツ。歯が所々欠けていた。
元来、反権威主義者の私は彼の外見に嫌悪感を抱くことは無かったが、それにしても、大自然に憧れてきたニュージーランドの初夜の話し相手がロマンチックな恋が芽生えるかもしれない女性ではなく、映画『フォレスト・ガンプ』に出てくるようなヒッピー野郎では、あまりに天を恨むことになるというものだ。

私は言った。「こんばんは。君はどちらの国の人なんだい。」
彼は答えた。「ああ、私はニュージーランド人だよ。国内を周っているんだ。
その後、彼は早口で何かをたくさんしゃべったが、私には分からなかった。
私は腹が減っていたのと、街を散策してみたかったことから、彼の話を遮って言った。「すいませんが、私は英語が不得意なんだよ。あと、ちょっと買い物したいんだ。」
彼は急に悲しそうな顔をして言った。「分かったよ。」
私は答えた。「また後でな。」
彼は自分の車の中に入って、スライド式のドアを閉めた。
私はキャンピングカーに乗って以来、初めてすべきことが無い状態になった。ずっと、次は何をする、それはどうやるの連続だった。
涼しい夜風に吹かれながら、フィティアンガ町を歩いた。

そうは言っても、町はすごく小さく、商店街は国道沿いに100mくらいしかなかった。どの店も閉店時間が早く、カフェバーと移民がやっている店だけが開いていた。
スポーツバーだけが混雑していて、町のみんなが集まる唯一の酒場のようだった。だれもが大きなモニターに映し出されたスポーツを見て騒いでいた。

車に戻って来たとき、また隣人が話しかけてくるんじゃないかと私は不安になったが、それは杞憂だった。彼の車は照明が消され、彼は寝たようだった。
キッチンのカバーの開けても勝手に閉じてくる不具合を養生テープで対処した
私は車内のキッチンで歯を磨くことにしたが、この時、キッチンのシンクとガスコンロを覆うガラス製のカバーに不具合があることが判明した。
カバーを開けても、徐々に倒れてきて閉まってしまうのだ。カバーの金具の締め付けの調整がなされていなかったのだ。当然、車には直す工具が搭載されておらず、私は開けても開けても閉まってくるカバーを前にして、イライラした。
しかし、私は閃いた。養生テープでカバーと壁をくっつければいいのだ。またしても、養生テープが私を救ってくれた。

Jucyレンタカーのキャンピングカーに対する諸々の不具合に対して、大いなる不満を抱きながら私は天井近くにベッドを設置した。このキャンピングカーではベッドは二つ作れることになっていた。一つはソファーを変形させてベッドにする。もう一つは天井近くに板を置いてベッドにする。
後者の方がベッドの面積が広いので、私は後者で寝ることにした。気温は摂氏10度で寒くなかった。消灯のためにスイッチを消すとき、かなり身を乗り出さないとスイッチまで手が届かないことに不満が生じたが、これまでの大きな不具合で慣らされたのか、それほど不満に思うことは無かった。
言っておくが、私はキャンプは不便を楽しむ趣味だと思っている。しかし、その不便と言うのは自然の中で生きる際の不便を指すのであって、与えられた道具の欠陥をもってして不便というのではない。与えられた道具は規定通りの機能を発揮しなければならない。その道具を使って、不便を克服していくのがキャンプの楽しさなのだ。道具の不具合はキャンプ以前の問題だ。
それでも、日本の喧騒から離れて、今日やっと念願のキャンピングカーで就寝できることに私は幸せを感じた。死ぬ前にやっておきたいことが、少し減った気がして気が楽になった。
