6. 2024年9月22日、日曜日、硫黄の湖Rotoruaまで

Whitianga町を出発した

 隣の車がエンジンをかけた音に私は起こされた。スマホを見ると六時だった。シェードを開けるとまだ日の出前で外は暗かった。隣の車はすぐ発車し、駐車場を出て行く音が聞こえた。

 私は布団を首元まで巻き付けてもう一度寝ようとしながら思った。こんな未明から運転を開始するなんて、夜明けのビーチでも見たいのかな。

早朝から運転を開始したほうがいい理由二つ

 しかし、後日、彼の行動を私は理解できるようになった。早朝に運転を始める理由はこうだ。

 早朝は交通量が少ないので、足の遅いキャンピングカーは他の車の迷惑にならないし、自分も気楽に運転できる。そして、早めに目的地に着けば、無料のキャンピングカー用駐車場が空いている可能性が高い。

 つまり、キャンピングカー生活は、早寝早起きをして、得るべきものを得なければならない、という勤勉さが要求される生活であったのだ。都会での仕事疲れから逃げてこれたと思ったら、どうもそうではなかった。

 朝食は牛乳とシリアルとカロリーメイト。

フィティアンガ町Whitiangaからロトルア湖Rotoruaまで230km、キャンピングカーだと休憩も入れて6時間かかる。

 フィティアンガ町を出て10km走ったところで川を渡った。川は水遊びができるようになっていて、近くには無料のキャンピングカー用駐車場「フリーダムキャンピング(freedom camping)」があった。ニュージーランドにはこのフリーダムキャンピングがあちらこちらにある。国を挙げてキャンピングカー文化を育てていることが分かる。

Freedom Campingは無料だが場所によっては夜間寂しくて怖くなる

 実は、昨晩、当初はこのフリーダムキャンピングにて停泊しようと計画していた。名前はコログレンフリーダムキャンピング(Corolgen Freedom Camping)という。

Coroglen freedom campingは川遊びができる。私が行ったときはトイレは工事中だった。

 理由は、地図上はフィティアンガのフリーダムキャンピングが二つとも街中にあるのに対して、コログレンは自然の中にあったので、キャンピングカー生活を楽しむにはコログレンがいいのではないか、と思ったからである。

 しかし、日が暮れた後に到着した時の私の感想はこうだった。「これはあまりに寂しいし、幹線道路の脇なので犯罪に巻き込まれやすいし、犯人も逃げやすい。ここはだめだ。」

 まだ、キャンピングカーでの夜を過ごしたことがない私はもし大自然の中でキャンプをしたら孤独の中で真っ暗な夜を過ごすことになることを理論では分かっていたが、覚悟としては不十分だったのだ。

Coroglen Freedom Camping

 事前に見たユーチューブで、車上荒らしがニュージーランドでもあることを私は知っていたこと、そして、日本の江の島でキャンピングカーでの車内泊を幹線道路沿いの駐車場でした時、暴走族が幹線道路を長時間走り回っていた記憶も今回の選択に影響を与えた。

 夜、真っ暗になるとはいえ、幹線道路の脇である。大自然に比べたらまだ人の気配がある方だったが、常日頃、自然よりも人間の方が怖いと思っている私は、防犯のために街中へ向かったのである。

川辺にはボートを降ろすスロープが備わっているのがニュージーランド文化

 川辺には車からボートを降ろすことができる場所が作られている。これはボートを持っている人にとって大変ありがたいことなのだ。家からボートを車で牽引して川のそばまで持って行くことは簡単だ。しかし、問題はどうやってボートを川に降ろすかだ。これはボートを持っていない人、ボートを買ったばかりの人にとって盲点となる課題だ。ゴムボートなら軽いから人力で降ろせるが、そうでない場合は台車ごと水の中に侵入させるスロープが必要になる。そのスロープがニュージーランドの水辺では備わっているのである。ここが「分かっているね。」と言いたくなるポイントなのである。

ボート積んだ台車を川に侵入させることができるスロープ
川辺から駐車場を眺めた風景。なだらかな坂で車が川辺まで下りられる。

Whenuakite Kiwi Zone Viewpointに寄った

 さらに17km運転したところで、展望場所をしめすビューポイントの看板が出てきた。ニュージーランドでは親切なことに「この先に展望台がある」という意味の「Lookout」と書いてある看板があちらこちらにある。Whenuakite Kiwi Zone Viewpoint(フェヌアキテ・キウィ・ゾーン・ビューポイント)と書いてあった。

Whenuakite Kiwi Zone Viewpoint
Whenuakite Kiwi Zone Viewpoint フェヌアキテ・キウィ・ゾーン・ビューポイント
Whenuakite Kiwi Zone Viewpoint
フェヌアキテ・キウィ・ゾーン・ビューポイントの駐車場は5台くらい停めることができる。
Whenuakite Kiwi Zone Viewpoint
駐車場から特に案内板は無い。どうやらこの道をいくと見晴らしがいい場所に言えるようだ、ということが予想できる。
Whenuakite Kiwi Zone Viewpoint
見晴らしは良かった。ここまできて、やっと説明書きの案内板がある。

Turua町で休憩した

 展望台から55km運転したところで、私はツルア(Turua)という町に来た。私は休憩することにした。地図で見ると、オークランドを出発して、コロマンデル半島に行って帰ってきたことになる。一度走った道をもう一度走る事はなんだか無駄な旅をしているような気がしてくるが、次のロトルアに効率的に行くには仕方が無かった。

 ただ、後々理解してくることだが、キャンピングカー旅行は有名な場所をできるかぎり沢山周る事が醍醐味なのではなく、途中の道での風景を楽しむことが醍醐味なのである。急いで点と点をつなぐような旅は既存のツアー旅行を自力でやるだけのことであり、それではキャンピングカー旅行本来の楽しさを享受できないのである。

Turua町は小さな町。
日常品を売る店があった。

セルフでガソリンを入れる時、クレジットカードが使えず焦った

トヨタのハイエースのガソリンメーターの意味

トヨタのハイエースのガソリンメーター。メモリ1つで100km走れる。

 ガソリンメーターのメモリがE(空)まであと1つになった。トヨタのハイエースは燃費が悪いと聞いたことあった。そこで、あと何キロ走れるのかを調べてみた。スマホで「トヨタ、ハイエース、燃費」で検索し、100kmはまず大丈夫だろうという事が分かった。ところで、ガソリンを入れてみることにした。実際は車はEになってからも20kmは走れる仕様になっていることが多い。

ニュージーランドのセルフ式無人ガソリンスタンドの使い方

 ニュージーランドの低価格のガソリンスタンドは無人店舗で、クレジットカードだけセルフ給油がほとんどだ。ここで少し心配になったのがクレジットカードが使えるかどうかだった。過去の海外旅行で日本発行のvisa, masterカードが使えなかったことがあったからだ。

 その心配は的中した。無人のガソリンスタンドで決済機にPaypay visaカードを入れると、「このカードは使えません。」と拒否された。

ガソリンはクレジットカードしか使えない。日本発行のvisa, masterは使えない事があるので、複数枚持って海外旅行したほうがいい。

 東急のmasterカードの方を入れてみると、許諾され、「ガソリンを入れろ。」と表示が出た。

 ガソリンを入れる流れはこうだ。まず、ガソリンを入れる機械から少し離れたところにあるクレジットカード決済機に行って、タッチパネルで開始をタッチする。

 機械がどの給油機で入れるのかを訊いてくるので、車を停めた給油機の番号を入力する。

 車をハイオクかレギュラーかを選択する。レギュラーはUnleaded91と書いてある緑のボタンである。

 つぎに、予算を入力する。ここが日本人にとって戸惑う瞬間である。金額、しかもニュージーランドドルを入力するのであって、リットルではない。

 日本人で、しばらく運転していない者なら、こう思うだろう。

 「えっと、20ドルって、何リットルかな。それだと目的地に到達できる量かな。」

 ニュージーランドは大自然の国である。困ったときに近くにガソリンステーションがあるとは限らない国である。つまり、目的地到達前にガス欠になると、そこで野宿して救援を待つことになる。野宿は違法で罰金の対象である。さらに、それがスマホの電波圏外で起きたなら、救援すら呼べない事になる。こうなると、「どうやって助かるんだ。」と恐ろしさで震えてくる。

 もし、満タンを希望するならfillを選ぶ。ニュージーランドのガソリンスタンドでは、fullという単語は使われない。日本人が「え、fillってなんだろう。」と疑問に思う瞬間である。

 最後にクレジットカードを差し込んで暗証番号を入力する。カードが使用可能かどうかを調べる画面が表示され、五秒位待つ。心配になる瞬間である。

 許諾されると、「オーケー。給油機の所に行って入れろ。」と表示される。 

 ここでPaypayのクレジットカードが拒絶されたが、二回目以降のガソリンステーションではそれが使えた。同じ会社なのにである。おそらく、カードのICチップが汚れていたのだろう、と私は推測している。

Rotorua ロトルア湖に着いた

 16時にロトルアの町に入った。ここには無料キャンピングカー停泊場、フリーダムキャンピングは二か所ある。

 記念すべき一泊目は、遅く行ったら目当ての駐車場は満車で、慌てて行った次の駐車場は殺風景で、かつ、隣人は話好きなヒッピー野郎(ヒッピーが嫌いな訳ではない)だったという苦い経験となった。いい思い出を作るためには、早く行って、場所を確保することが必要である、と悟ったのであった。のんびりしてるといい思い出が作れないというのがキャンピングカー旅行だと悟ったのである。

 キャンパーメイトで停泊できる場所を見ると、一つは湖のほとりで景色がよさそう、もう一つは街中にある大きめの駐車場だった。どう見ても、前者がロマンチックでよさそうに見えた。

ロトルアの町には二か所、フリーダムキャンピングがある。どちらもself containedのみが停泊できる。

 結果はまたしても惨敗だった。16時だと言うのに、満車だったのである。

行ってみて分かったことは、三台までしか停められなく、それならすぐ満車になってしまうというものだった。

 満車かどうかは行ってみないと分からない。アプリではその情報は表示されない。

 私は昨日に引き続き、再度焦った。もう一つの駐車場へ急いだ。

goverment gardens camping area こちらは10台くらい停められる。

 

あと一台というところで、なんとか停める事ができた

 ロトルアの賑やかな町を走り、私はやっと着いた。見ると、大きな駐車場で、それらすべてが無料キャンピングカー停泊場だった。しかし、空いていたのは入り口の傍の一台分だけだった。

goverment gardens camping area ロトルア硫黄湖のスパの傍にある。
goverment gardens camping area. self containedだけが停泊できる。

 場所を選ぶ自由はなかったが、私は安心した。

 私が停めた直後、何台かが駐車場に入ってきたが、彼らは空いていないことを理解すると仕方なく出て行った。ここが空いてないと、彼らが行くべき場所はロトルア町の外になり、かなり遠くなる。もっとも、有料駐車場なら、すぐ近くにあるだろうけれど。

入り口を入ってすぐ左の一台分だけが空いていた。危なかった。

 車を停めた時から、便所の肥溜めのような匂いがしていて、私は「なんだ、この便所の匂いは。この中で寝るのかよ。」とがっかりしていた。

 しかし、付近を散歩して、すぐに私はこの匂いの元を理解した。わたしはロトルアがなぜ有名な観光地なのかを理解せずにきていたのだった。

 ロトルアは硫黄温泉で有名だったのだ。

 先の悪臭は硫黄温泉の匂いだったのだ。硫黄温泉は体にいい。そうと分かった私はとたんにその匂いを悪臭と思わず、温泉らしい良い匂いだと思い始めた。まったく、人間の匂いに対する思いと言うのは勝手なものだと考えてしまった。

硫黄の匂いが充満する湖。
温泉である。ニュージーランドが火山国であることを認識させられる瞬間である。

 ロトルア湖の沿岸には歩道が整備されていて、「有毒ガスがあるから、この歩道以外は歩くな。」という標識がある。

ロトルア湖。硫黄のガスが人体に有毒なので、自由に歩くことはできない。

近所のスーパーに歩いて買い物に行った

 まだ日暮れ前で、時間的に余裕があったので、スーパーに買い出しに行った。歩いて五分位の所に大型スーパー「PakinSAVE」があった。

 ここで気が付いたことは、車で買いに行けない、ということだった。

 車で行ったら、その間に、他の人に場所を取られてしまうからだ。無料キャンピングカー停泊所では一度停めたら、次の停泊所に向けて出発するまで運転できないのだ。

ロトルア町にある大型スーパー。ここで買い出しをした。
店内はアメリカのスーパーのような感じだった。

 私は牛乳とピクルスとパンとハムとトイレットペーパーを買った。

夕食はサンドイッチ。まだ、キッチンには不慣れなので、パンは焼かないでそのまま食べた。

 車に戻ってきて、サンドイッチを作って、食べた。キャンピングカー生活ではじめて食事らしい食事をした。しかし、まだ火を使った料理はしていないので、自分の中ではキャンピングカー生活を楽しんでいる度合いは自己評価で60点ぐらいだった。

 食べ終わると、運転で疲れていたことと、無事停める事ができたことで九時半に寝てしまった。

 しかし、翌朝、私が大事件を起こしてしまうことを私はまだ知らなかった。

 

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